大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和25年(ラ)16号 決定

抗告人 川口良夫

右代理人弁護士 津川友一

相手方 川口登美子

主文

相手方川口登美子の同居請求に関する部分については本件抗告を棄却する。

相手方川口登美子の扶養料請求に関する部分については原審判を取り消し事件を神戸家庭裁判所に差戻す。

理由

本件抗告理由は抗告代理人津川友一の提出した抗告状中抗告の理由と記載した部分で末尾添付のとおりであるが、これに対し当裁判所は次のとおり判断する。

一、抗告人は右抗告理由において相手方と同居のできない理由として(イ)乃至(ニ)の事情を挙示しているが、右はいずれも同居を拒絶する正当な事由でないことは原審判の説明するとおりであるから原審判が相手方の同居請求を認容したのは当然であつてこの点についての抗告は理由がない。

二、次に原審判は相手方の扶養料請求について金十二万七千円及び昭和二十五年三月から昭和三十八年三月まで毎月末日毎に金七千円宛の支払を抗告人に命じたのであるが、相手方の原審における申立ならびに当審における陳述によれば、右扶養料は相手方自身だけでなく長男一郎の分を含むものであるが、長男一郎は本件記録で明かなように扶養料の請求をしておらずその内訳も不明であるし又昭和二十三年六月四日以降今日までの過去の扶養料についても抗告人が今日何故に支払わねばならないかについても十分な説明がないのであつて、原審が抗告人に対し前示のような範囲で扶養を命ずるに当つては相手方自身の生活費の額、抗告人の資産及び過去の扶養料を立替金として請求するか不当利得金として請求するか等について審理した上適当な金額を判定すべきであつて原審判は結局審理を尽さず又理由不備の失当があるものであるからこの部分について抗告は理由があるものといわねばならない。

よつて本件抗告は相手方が同居を求める部分については、これを棄却し、相手方が扶養料を求める部分については家事審判規則第十九条第一項により事件を神戸家庭裁判所に差戻すこととし、主文のとおり決定した。

抗告の理由

一、抗告人と申立人とは両親の反対する恋愛結婚であつて入籍も子供が生れたので仕方なく両親の反対を押し切つてこれを為した様な次第であつて、

(イ) 年令は相手方が四年も上であつて年令差から性格が合わない

(ロ) 両家の両親が対立しているので家庭の円満が保てない

(ハ) 感情のもつれから結婚生活の持続は出来ない

(ニ) 同居して不幸な生活をなすより離婚するのが双方の幸福である

以上の理由によつて同居出来ない。

二、扶養料については婚姻生活を持続して子供を相手方が扶養することを前提としての計算であつて、離婚すれば、子供は抗告人が扶養するから相手方に対して扶養料を支払う必要はない。

以上の理由によつて右審判は失当であるので茲に抗告に及んだ次第であります。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例